生ごみの堆肥化
高倉式コンポストの活用編
2017年07月
技術協力部 部長専門員 倉 弘二
図1.酸素の供給量とコンポスト化
コンポスト化を説明するときに日本語では「腐らせる」、英語では「Decay」の言葉を使用することがあります。
これは「朽ちる」の意味を指していると思いますが、「腐敗する」の意味を含んでおり、コンポストで使用する場合は不適切だと思います。
悪臭を発すること無く、有機ごみをリサイクルしてコンポストをつくる、私たちにとって利益となる行いであれば「発酵」の言葉が適切でしょう。
そして、コンポスト化を発酵に導くためには、「空気(酸素)・水分・微生物(菌)」の3点を管理するだけで十分に可能です。
@空気(酸素):図1に示すように酸素の有無に係わらずコンポスト化は可能です。しかし、酸素を供給することで、悪臭を発するなどの腐敗するリスクを低くすることができます。
ぶどう糖を例にすると、好気性は嫌気性の19倍のATPを生成します。ATPが多いと微生物は活発に活動するので、単純に考えても有機物の分解時間が短くなります。
A水分:水分は微生物が活動するためには必要であり、適切な水分範囲は40〜60%です。水分が多くなると次の理由から腐敗するリスクが高まります。
コンポストは水分・固形物・空間で構成されており、水分が多くなると水は空間を満たしていきます。そして、空気中の酸素濃度は21%に対し、水中の酸素濃度は0.0008%しかありません。
水分が多くなると途端に嫌気状態になってしまい腐敗するリスクが高まります。生ごみコンポストで失敗するのは、生ごみの水分が80%と多量の水を含んでいるにも係わらず、適切な水分調整をしていないからです。
➂微生物(菌):コンポスト化と微生物の係わりについては既に分かっており、図2に示すように3段階に分かれます。
それぞれに特徴的な微生物も分かっており、分解の状況に応じて優先的な微生物は交代します。すなわち、必要な微生物を前もって取り揃えることで、スムーズな交代を導くことができると考えています。
第1段階に力を発揮してくれるのは納豆・ヨーグルトなどの「発酵食品」の微生物です。
第2段階の放線菌は森の落ち葉(腐葉土)の下の白い菌です。同時に細菌や糸状菌(カビ)も集めることができます。
森の中に入ると土っぽいにおいがしますが、これは放線菌がつくっており、とても身近な菌です。
第3段階の担子菌は「きのこ」のことです。これも森の中で集めることができます。また、店で売っている「きのこ」の石づきを利用することもできます。
これら身近な微生物を培養して発酵床をつくり、有機ごみを混合してコンポスト化します。発酵床は、もみ殻(微生物の棲み処)と米ぬか(微生物の栄養)を使うと便利ですが、目的に応じた代替物も使用可能です。