特設コーナー 研修技術活用

生ごみの堆肥化 (PartU)
高倉式コンポスト展開編

2018年12月

技術協力部 部長専門員 倉 弘二

既存資源の活用と高い汎用性

前号の「生ごみの堆肥化」とテーマを変え、コンポスト化技術の展開について考えていきたいと思います。

高倉式コンポストはJICA草の根事業並びに海外研修事業を中心に、様々なスキームを通じて海外の方々にコンポスト化技術を指導・啓発しているところです。

既に70か国以上の海外研修員が高倉式コンポストの講義を受講し、規模の大・小はありますが、30か国以上の国々・地域でコンポスト化に取り組まれています。

では、どうして様々な国で高倉式コンポストに取り組んでいるのでしょうか。

その理由として、「現地で採用しやすい『適正技術』であり、コンポスト化の取り組みを家庭レベル〜コミュニティレベル〜中小コンポストセンター〜大規模コンポストセンターまで、様々な規模・シチュエーションに対応することが可能である。」からです。

別の表現をすれば、「現地のどの様な場面でも対応可能である。」ことであり、指導した技術が地域技術として定着し、自発的な廃棄物管理改善の進展を促すためには、移転する技術が地域にとって適正であることが求められます。

国際技術協力、特に草の根技術協力の分野ではこの考え方は重要です。


コンポストの利用(緑溢れるコミュニティ)
また、私は適正技術として導入するためには、1.技術的に受け入れられること、2.経済的に受け入れられること、3.文化的に受け入れられること、4.環境と調和的である、の4点を考慮すべきと考えています。

高倉式コンポストを確立し展開するに当たっては、適正技術であるための7つのキーワードを以下のように抽出しました。

@技術レベル:自らが応用・改善するためには、基礎の理解に重点を置くとともにシンプ
 ルテクノロジーとする。

A技術の効果:日々発生する生ごみが悪臭も無く直ぐに処理でき、コミュニティ緑化や廃
 棄物量削減に貢献するなど、短・中・長期的に様々なベネフィットを得ることができ 
 る。

B持続性:社会還元を目指した情報公開と教え合い、地域材料を使用することでトラブル
 時のリカバリーも容易である。

C低コスト:地域で調達できる材料、簡易な微生物採取と培養方法を採用するなど幅広い
 選択肢がある。また、既存技術との融合、既存設備などの資源を積極的に活用する。


コンポストの利用(農業利用)
D文化・伝統への適合:コンポストは昔から農業技術として取り入れられており、もとも
 と地域文化の一部として定着していることが多い。また、微生物は伝統的な発酵食品か
 ら採取する。

E環境配慮:コンポスト化は有機廃棄物の資源化・減量化を目指すことで、廃棄物全体の
 減量化、コミュニティの衛生環境向上・緑化、土づくりを通じた持続可能な農業などに
 貢献する。

F現地調達:必要なものは全て地域で調達する。

昨今の社会情勢として、私はコンポスト利用による農作物栽培の重要度が増してきていると感じています。

持続可能な農業だけでなく、コンポストを利用することで化学肥料・農薬の使用を抑え、安全・安心な農作物が望まれています。

それに応えるためには、大量に発生する生ごみを原料として、適正なコンポスト化技術を利用した高品質なコンポストの製造が望まれています。



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