特設コーナー 研修技術活用

下水道維持管理研修について
(パートT:概要)

2019年7月

コースリーダー 末田 元

世界各国から参加した研修員の分布図


いてつく寒さの中、下水処理場の見学
現在JICA九州からKITAが受託している研修の一つに、JICA集団研修「下水道システム維持管理(B)」があります。

平成20年度に第一回が実施され平成30年度で11回の実施になりました。この研修について少し紹介いたします。

この研修は、当初「下水道維持管理システムと排水処理技術(B)」という名称で平成20年度に第一回が実施されました。研修期間は8週間でスタートしましたが、29年度から7週間に短縮となり現在に至っています。

この研修の背景は、「開発途上国でも下水道施設の建設が始められてきており、それらの施設の適正な維持管理が求められてきている。

しかし、それらを維持管理する技術者が少なく、幅広い知識と技術を持った技術者の確保が急務となる。」というものです。

このように本研修の目的は下水道施設維持管理技術者の育成ですが、本研修のジェネラルインフォーメーション(GI)では、学ぶ内容として、下水道に関する、法律、経営・広報、設計、維持管理、工場排水規制、と下水道システムに関する全般となっています。

維持管理関係以外の研修内容では、水環境と下水道事業の関わり、下水道の基本設計、管渠設計、小規模処理場設計の概要、浄化槽概論などを取り込んでいますが、それらの研修は各々3時間と短く、基礎の基礎を勉強してもらうにとどまっています。

7週間(49日間)の研修ですが、研修員に対する事務手続きに要する日数、土日、アクションプラン作成に要する日数などを差し引くと、下水道事業そのものに関する研修の実研修日は23.5日と7週間研修の半分以下の非常に短い研修となっています。

しかし、GIに記された研修内容(下水道に関する幅広い内容を提供)を組み込むことが必要であるため、専門的な内容を深く掘り下げた講義はあまりなく、下水道に関する基本的なことを学んでもらうカリキュラムになっています。


水質分析実習で指導を受ける研修員
私が担当した平成23年度から平成30年度までの8回の研修では29か国から合計67名の研修員が参加しました。

研修応募者総数は104名で、一研修当たりの応募者数は平均で13人と多く、このコースの人気が高いことが分かりますが、下水道事業の取組はまだまだ先のこととしている国からの参加者も多くいます。

これらの参加者の国、地域では、水道事業が優先されているところが多く、下水道事業に取り組むにはまだまだ先のようです。

このため、研修を受けた後の知識の活用が帰国した後十分なされるのかという懸念があります。

特に、最近の研修ではパワーポイント(PPT)を使って講義をすることが多く、それらを持ち帰った研修員が数年後の必要になった時に読み直してみて研修当時の内容を思い出せるかという心配があります。

人気のあるコースですが、このように大きな問題を抱えているようにも思われます。

次回のパートUについては、研修内容をより深く理解してもらうためにこの研修で取っている方法「振り返りの時間」について紹介します。



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