国際研修部トピックス

2023年度来日研修 アフリカ地域村落飲料水管理(B)コース new!
〜アフリカの明日のために〜

2023年11月1日〜2023年12月5日

コースリーダー 原口 清史

研修訪問先での写真1


研修訪問先での写真2
 アフリカではいまだに4億1‚000万人が基本的なレベルの飲料水を得られず、安全に管理された飲料水にアクセスできない人は、都市部で5人に2人、農村部で5人に4人と言われている。このため農村部の女性や子供たちは水汲みに多くの時間が割かれ、仕事や学校に行けない状況が続いている。

 アフリカ全土では100万件以上の井戸があると言われている。JICAにおいても2000年前後から都市部での水道整備や農村部での井戸の供給を進め、井戸の掘削は1万件以上になっている。しかしながら、調査によると、その内の約3割が故障又は放置されている状態であることがわかった。このためJICAはウガンダやザンビアなどで給水施設での持続的維持管理体制の構築を目指して長い間プロジェクトを推し進めてきた。


研修訪問先での写真3
 本コースは、来日研修といった形をとりつつ、目的は持続的維持管理体制の構築であり、その目的と併せて、一方でJICAが進める都市部での水道管理や水系感染症を引き起こす衛生面での対策についても研修科目に盛り込んで実施した。

 当初、アフリカ地域村落飲料水管理のAコースは、フランス語圏を対象にJICA北海道、Bコースは英語圏を対象にJICA四国がそれぞれ担当していたが、2019年度からBコースについてはJICA九州が担当することになった。しかしながら、2019年度に1回実施したものの、その後コロナパンデミックの影響により、リモート研修が3回続き、2023年度にようやくJICA九州として2回目の来日研修を実施することができた。

 研修員は4カ国(ガンビア、ケニア、ルワンダ、ウガンダ)の4名で全員がエンジニアであった。研修科目は、維持管理における技術分野とソフト分野の2つに分けた。
 技術分野では、地下水の維持管理等を目的として自治体や企業を訪問し、具体的な現場や工場でポンプ設備を見たり触れたりすることで具体的な知識を得ることが出来た。特に、東京での研修では、実際にアフリカで地下水の掘削や維持管理を実施してきた企業の方々の講義や見学に接することができ、双方が大きな満足感を得たようである。


研修訪問先での写真4
 ソフト分野では、持続的な維持管理に必要な住民の合意形成の進め方や環境教育を活用した教育問題などの講義の後に活発な議論を行い、更に住民活動については、ボランティアの方々との意見交換を実施した。研修科目では、研修員同士の討議の時間を取っており、お互いが共通の課題について顔を突き合わせながらの議論が大いに研修員の理解を深めたようである。このようにコロナパンデミックの影響によるリモート研修から来日研修へ戻ったことは、改めて対面研修の大切さとその効果の大きさを痛感した次第である。


研修訪問先での写真5
 国連の人口予測によると、アフリカの2021年の総人口は14億人弱で、世界人口の約18%だが、2050年には24億人を超え、世界人口の4分の1をアフリカが占めると予測されている。この人口増加が日本にとってもビジネスチャンスと捉え、外国企業の進出が多いナイジェリア、エジプト、ケニアなどを先ず優先して開拓し、その後周辺国に拡大していく案も提唱されている。

 しかしながら、アフリカにとって人口増加による最大の脅威は、食糧問題と水問題である。食料問題は物資として輸入する方法も考えられるが、水問題の解決方法は極めて困難と言わざるを得ない。水問題を解決できるかどうかがアフリカの発展を左右すると言っても過言ではない。SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」において、誰ひとり取り残さないための道筋を世界及び日本が総力を挙げてアフリカの明日のために支援していく必要がある。