国際研修部トピックス

2023年度来日研修 地域の水問題を解決する実践的統合水資源管理研修(A)&(B)コース new!
〜水資源問題は世界共通の課題であることを実感〜

2023年9月13日〜10月6日(A)、11月15日〜12月8日(B)

コースリーダー 緒方 信一

研修訪問先での写真1


研修訪問先での写真2
 とにかく長い研修名で、一度聞いたくらいでは何のことだか判り難いと思います。そもそも統合水資源管理という考え方そのものが、どう定義づけするか研究者の間でも意見が分かれるところだそうです。今回の研修を組み立てる上で一番頭を悩ませたのは、この統合水資源管理という難解なものをどのようにして研修員の皆さんに理解してもらうか、ということでした。そこで、先ずは研修員自身が抱える身近な業務上の課題に目を向け、その課題を解決するためのアクションプランを模索しながら研修を進めていくうちに理解が進む、というKITA流の課題解決法の活用を目指しました。

 研修は(A)と(B)の2コースに分かれ、(A)は主にベトナム、カンボジアなどのアジア諸国から、(B)はヨルダン、モロッコ、エチオピアなどの中東、アフリカ諸国からそれぞれ6名ずつが約5週間の研修を行いました。(A)の参加国では多雨による河川の氾濫、(B)の参加国では逆に雨が降らず渇水、地下水の枯渇が問題となるなど、同じ研修でも議論の中身が全く異なるという水問題特有の現象が顕著になりました。


研修訪問先での写真3
 研修員の皆さんは講義開始の15分前には全員が着席して待つという熱心さで研修に取り組みました。講義内容は難しく、且つ幅広い分野に渡るため、研修員にとっては大変なものでしたが、毎回多くの質問が講師に浴びせられ、講師の先生方もそれに応えていただき、充実した時間が過ぎました。

 研修期間を通して気掛かりなのは、食事です。JICA九州滞在中は問題ないのですが、現場視察や研修旅行中の食事では宗教上の制限がある研修員にとっては何を食べるかは大問題です。その中で、全員が安心して食べることができるハラル対応できるインド料理店での昼食会では、アラビア語も飛び交い、笑顔で大いに盛り上がりました。また、私よりも辛いのが苦手な人がいたのは少し驚きでした。


インド料理店での昼食
 松原ダムの見学では、他のダムの様子や河川の測定ポイントの状況が遠隔でリアルタイムに確認できるモニター画面に驚きの声をあげたり、コンクリート造りのダム本体の中を最深部まで降りていく時はハラハラドキドキでした。研修旅行最後の熊本市水前寺成趣園では湧水を活かした日本庭園を満喫、ぎこちない2礼2拍手1礼での神社参拝、なかでも泉水の鯉や鳩への餌やりにはしゃぐ姿に、平和な日本とは裏腹に帰国後の彼らを待つ日常が頭をよぎりました。


熊本市水前寺成趣園を訪問
 気候変動は間違いなく水資源問題に大きな影響を及ぼします。脱炭素社会実現は当然ですが、今、温暖化が引き起こす変化に対するレジリエンス(回復力)とミティゲーション(回避、軽減)が求められています。今後も水資源に関する研修の重要性は増すものと思われます。自然災害国である日本が辿ってきた様々な経験と対応が全て正しい訳ではありませんが、その中から自国に相応しいものを取り入れて、水問題に対処してもらいたいと願う次第です。